こんにちは、moto_instructorです。
前回の記事「入隊前に腕立て50回できるようにした結果」では、継続することの大切さについて書きました。
今回は、自衛隊での20年間の経験から学んだ「本当に必要な体力」について、3段階に分けて解説します。
重要な前置き:これはあくまで自分の個人的な経験と考えに基づいた内容です。
体力向上には様々なアプローチがあり、この考え方が絶対ではありません。段階的に進むことが安全で確実だと自分は思いますが、状況によっては段階を飛ばして進むことも十分にあり得ます。
一番大切なのは、自分に合った方法で継続することです。
なぜ自衛隊で体力が重要なのか
自衛隊における体力は、単なる健康維持や見た目の問題ではありません。
有事の際には重装備で長時間行動することがあり、そんな状況で求められる体力は、一般的なフィットネスとは違った側面があると感じています。
自分の経験では、体力には段階があり、それを意識することで効率的に向上できると思っています。
3段階体力論の全体像
20年間の自衛隊生活で気づいたのは、体力には明確な段階があるということでした。
第1段階:基礎体力「自分の身体をコントロールする」
第2段階:応用体力「力を伝える・人や物を動かす」
第3段階:総合力「自動化・動きながらの思考」
補足:生活習慣「食事・睡眠・免疫力の基盤」
この順番を意識して進むことで、より安全で確実な体力向上が期待できると考えています。
ただし、この順番が絶対ではありません。状況や個人の特性によっては、段階を飛ばして進むことも必要な場合があります。
第1段階:基礎体力「自分の身体をコントロールする」
不器用だった自分の体験
自分は決して運動神経が良い方ではありませんでした。
格闘技の回し蹴りができるようになるまでに半年もかかったり、基本的な動作でも人より時間がかかることが多々ありました。
不器用な人に起こりがちな問題
身体をうまくコントロールできないと、こんな問題が起こることがあります:
無駄な体力消費が多くなりがち
- 力の入れ方が分からず、必要以上に力んでしまう
- 効率的な動きができず、すぐに息が上がる
- 練習できる回数が少なくなり、上達に時間がかかる
自分の場合も、力の使い方が分からずに疲れやすいことがよくありました。
第1段階で身につけるとよいこと
- 正しい基本姿勢
- 効率的な力の入れ方・抜き方
- 最小限の力で最大の効果を出す身体の使い方
もちろん、これらが完璧になる前に次の段階に進むことも多くあります。大切なのは、これらを意識しながら練習することだと思います。
第2段階:応用体力「力を伝える・人や物を動かす」
自分だけでは完結しない体力
第1段階で自分の身体をコントロールできるようになったら、次はその力を外に向ける段階です。
- 武器を扱う
- 人を投げる・運ぶ
- 重い装備を操作する
身体操作能力が低いまま進むとどうなることがあるか
自分自身の体験ですが、身体操作能力が低いまま武器の訓練を始めると:
手首や関節を痛めてしまうことがありました
力がうまく伝わらないため、局所的に負担がかかってしまうことがあるのです。
筋力があっても、それを正しく伝える技術があると、より安全に練習できると感じています。
第2段階の重要性
この段階では:
- 自分の力を効果的に外部に伝える技術
- 相手の力を利用して最小限の力で最大の効果を出す方法
- 装備や道具と一体化した動き
これらを身につけることで、より効果的に力を活用できるようになると考えています。
第3段階:総合力「自動化・動きながらの思考」
考えない体力
第3段階は、第1段階と第2段階で身につけた能力を、考えずに反射的に使えるレベルまで引き上げることです。
体力と判断力の関係
ここで重要な実験をしてみてください。
全力で100メートル走った直後に、簡単な計算問題を解いてみてください。
おそらく、普段なら瞬時に答えられる問題でも、答えられないはずです。
実戦で求められるレベル
有事の際、私たちは:
- 重装備で長時間行動しながら
- 瞬時に適切な判断を下し
- 正確な動作を継続する
必要があります。
今まで「いっぱいいっぱい」でやっていたことを、余裕でできるレベルまで引き上げることで、より安定したパフォーマンスが期待できると考えています。
第3段階の本質
この段階では、第1・第2段階で身につけた能力を組み合わせて:
- 極限状態でも冷静な判断ができる余裕
- 反射的に正しい動作ができる自動化
- 長時間の継続能力
を身につけることが重要だと考えています。
補足:生活習慣の基盤
どんなに優れた訓練をしても、生活習慣が乱れていては効果は半減します。
重要な3要素
食事・睡眠・免疫力
これらの基盤がしっかりしていないと:
- 訓練の効果が出にくい
- 怪我をしやすくなる
- 継続することが困難になる
自衛隊式の考え方
民間のフィットネスでは「追い込む」ことが重視されがちですが、自衛隊では「継続可能な強さ」が求められます。
短期間で燃え尽きるような方法ではなく、長期間にわたって高いパフォーマンスを維持できる生活習慣の確立が重要です。
生活習慣の具体的な工夫については、自分自身もまだ試行錯誤中です。
段階を意識することの利点
よくある課題
多くの人が経験することの一つに、第1段階の基礎を疎かにして第2・第3段階に進んでしまうことがあります。
起こりがちなこと:
- 怪我をしやすくなることがある
- 上達が頭打ちになることがある
- 非効率な動きが癖になることがある
ただし、これは絶対的なルールではありません。状況によっては段階を飛ばすことも必要ですし、人それぞれ適したアプローチがあります。
基礎を重視することの価値
基礎をしっかり固めることは、一見遠回りに見えますが、長期的には効率的なことが多いと感じています。
第1段階で身体操作の基本を身につけてから次に進む方が、結果的に安全で確実な成長につながることが多いというのが自分の実感です。
民間での応用
この3段階体力論は、自衛隊だけでなく民間でも応用できます。
スポーツでの応用
- 基礎動作の習得
- 技術と体力の融合
- 試合での応用
仕事での応用
- 基本的な体力・集中力
- 作業効率の向上
- ストレス下でのパフォーマンス維持
日常生活での応用
- 疲れにくい身体作り
- 怪我の予防
- 生活の質の向上
現在の自分について
転職後、デスクワークが中心になり体重が増加した自分ですが、この3段階論の重要性を改めて実感しています。
現在は第1段階の基礎体力から見直しを始めているところです。
同じような状況の方と一緒に、健康的で持続可能な方法を模索していきたいと思います。
まとめ:3段階体力論の価値
3段階体力論は:
段階的アプローチ
- 基礎体力:自分の身体をコントロールする
- 応用体力:力を伝える・人や物を動かす
- 統合体力:反射で動く・余裕を持って行動する
重要なポイント
- 段階を意識する:基礎から順番に積み上げることの価値
- 継続可能性:短期間の追い込みより長期的な取り組み
- 実用性:実際の場面で使える体力を目指す
- 柔軟性:状況に応じて段階を飛ばすことも認める
民間での活用
- スポーツパフォーマンス向上
- 仕事の効率化
- 生活の質向上
現役の皆さん、これから入隊される方、そして民間で頑張っている方々、自分に合ったペースで体力向上に取り組んでいきましょう。
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