こんにちは、moto_instructorです。
前回の記事「1-1完全攻略:言うことを聞ける力で信頼を勝ち取る方法」では、相手の話を正確に理解する力について解説しました。
今回は9段階システムの第4段階「2-1 基本的な返事・報告ができる」について深掘りします。
1-1で「理解する力」を身につけた皆さん、今度は「伝える力」の第一歩を身につけましょう。
ストーブのエピソード再考:本当の問題は何だったのか?
前回の記事で紹介した、ストーブの燃料を間違えた話を覚えていますか?
上官:「ストーブに燃料入れといて」
新人隊員がガソリンを入れてしまい、幸い先輩が点火前に気づいて事故を防いだという話です。
前回は「1-1 理解する力」の問題として取り上げましたが、実はもう一つ重要な問題がありました。
もし新人隊員が燃料を入れる『前に』一言相談していたら?
この事故は完全に防げたはずです。
悪い報告例:なぜ失敗したのか
実際の失敗パターン
先輩:「ストーブに燃料入れといて」 新人:「分かりました」→ ガソリンを入れる
何が問題だったのか
- 「分かりました」と言ったが、実際は分かっていなかった
- 初めての作業なのに確認を取らなかった
- 自分で判断して間違えた
良い報告例:2-1レベルでできること
パターン1:基本レベル(これでも十分良好)
先輩:「ストーブに燃料入れといて」 新人:「分かりました。初めてなんですけど、燃料はどれを入れたらいいですか?」 先輩:「あれ?初めてなの?そもそも入れ方わかる?」 新人:「実は見たことがある程度なので、教えて欲しいです」
このレベルで十分です
- 初めてであることを正直に伝えた
- 分からないことを素直に質問した
- 見栄を張らずに教えを請うた
パターン2:優秀レベル(ここまでできると評価高い)
先輩:「ストーブに燃料入れといて」 新人:「分かりました。初めてなんですけど、燃料は灯油で黄色のビニールテープを貼った方で合ってますか?」 先輩:「あれ?初めてなの?合ってるけど、そもそも入れ方わかる?」 新人:「見たことがある程度なので確認したいのですが、ストーブのここのメーターが緑に行くまで入れればいいんですか?こぼさないためにはどう気をつけたら良いですか?」 先輩:「そうだね。止めてもホースの中の灯油が残ってるから、緑に行く前に一度止めてみてどのぐらいの量が出るか確認してみるといいよ。こぼしても大丈夫なように拭くものも用意しておいた方が安心だね」
ここまでできると優秀
- 具体的な確認を取っている
- 作業手順について質問している
- 失敗を防ぐための方法を聞いている
2-1レベルで重要なのは「完璧さ」ではない
この段階で求められること
⭕ 良好とされる行動
- 初めてであることを正直に言う
- 分からない部分を素直に質問する
- 見栄を張らずに教えを請う
❌ 避けるべき行動
- 分かったふりをして間違える
- 一人で判断して失敗する
- 後から「実は初めてでした」と言う
大切なマインドセット
完璧を目指さなくていい、でも失敗すると評価が下がる
この段階では高度な報告技術は不要です。ただし、基本的な確認を怠って失敗すると、せっかく1-1で築いた信頼が崩れてしまいます。
新人が陥りがちな心理パターン
パターン1:「大人だから一人でできるはず」
高校を卒業したばかりの18歳。 「もう大人なんだから、これぐらい分からないなんて恥ずかしい」
でも組織では「分からないことを分からないと言える」ことが評価されます。
パターン2:「忙しそうだから邪魔したくない」
「先輩が忙しそうだから、こんな基本的なことを聞いたら迷惑だろう」
気を使ったつもりが、結果的に大きな迷惑をかけることになります。
パターン3:「見栄を張りたい」
「『初めてです』なんて言ったら、頼りないと思われる」
でも失敗した方がよっぽど頼りないと思われます。
実際の指導現場で起こること
多くの新人を見てきて、気づいたことがあります。
素直に質問する新人
「今の動き、初めてなので確認させてください」 「ここの部分がよく分からないので、もう一度お願いします」
結果
- 失敗が少ない
- 成長が早い
- 先輩からの信頼を得るのが早い
分かったふりをする新人
「はい、分かりました」(実際は分からない) → 間違った動きを覚える → 後から修正が必要になる
結果
- 失敗が多い
- 成長が遅い
- 「この子は大丈夫か?」と心配される
2-1で身につける3つの基本スキル
1. 正直な意思表示
「分からない」を恥ずかしがらない
❌ 曖昧な返事 「はい…」(自信なさそう) 「たぶん大丈夫です」(でも実際は不安)
⭕ 正直な返事 「初めてなので教えてください」 「○○の部分が分からないので確認させてください」
2. 適切なタイミングでの相談
作業前に確認を取る習慣
❌ 後から報告 作業後:「実は初めてだったんですが、なんとかやりました」
⭕ 事前に相談 作業前:「初めての作業なので、手順を確認させてください」
3. 基本的な敬語と報告
最低限の言葉遣いと報告の形
基本の返事
- 「分かりました」
- 「承知しました」
- 「ありがとうございます」
基本の報告
- 「○○作業、完了しました」
- 「○○で分からない部分があります」
- 「○○について確認させてください」
よくある失敗パターンと改善方法
失敗パターン1:後出し相談
❌ 悪い例 新人:「作業完了しました」 先輩:「お疲れさま」 新人:「実は途中で分からない部分があったんですが…」 先輩:「え?それなら先に言ってよ」
⭕ 改善例 新人:「すみません、途中で分からない部分があるので確認させてください」 先輩:「どこが分からない?」
失敗パターン2:曖昧な返事
❌ 悪い例 先輩:「この作業、できる?」 新人:「たぶん…大丈夫だと思います」 → 失敗して余計に評価が下がる
⭕ 改善例 先輩:「この作業、できる?」 新人:「初めてなので、手順を確認しながらやらせてください」
失敗パターン3:一人で抱え込む
❌ 悪い例 新人:(困っているけど黙っている) → 時間だけが経過、結果も出ない
⭕ 改善例 新人:「すみません、○○で困っているので相談させてください」
先輩の立場から見た「相談してくれる新人」
20年間、多くの新人を指導してきて感じることがあります。
相談してくれる新人への印象
「この子は安心して任せられる」
理由:
- 分からないことを隠さない
- 失敗する前に確認を取る
- 素直に教えを受け入れる
相談しない新人への不安
「何を考えているか分からない」
理由:
- 本当に理解しているか不明
- 失敗しても気づけない
- 指導のタイミングが掴めない
段階的な成長の流れ
第1段階:何でも相談(入隊直後)
「すべて初めてなので、一つ一つ確認させてください」
→ 失敗が少ない、安心して任せられる
第2段階:重要な部分のみ相談(数ヶ月後)
「○○の部分は経験がないので確認させてください」
→ 成長を感じられる、信頼が深まる
第3段階:問題発生時のみ相談(1年後)
「○○で予想外の問題が発生しました」
→ 一人前として認められる
まとめ:2-1は「素直さ」が最重要
2-1「基本的な返事・報告ができる」で身につけるべきことは:
重要なマインドセット
- 完璧を目指さなくていい
- でも基本的な確認は必要
- 素直に分からないと言える勇気
- 見栄より安全を優先
避けるべき行動
- 分かったふりをして失敗する
- 一人で判断して間違える
- 後から「実は…」と言う
目指すべき状態
- 初めてのことは素直に「初めて」と言える
- 適切なタイミングで相談できる
- 基本的な敬語で報告できる
この段階で重要なのは高度な技術ではなく、組織人としての基本的な姿勢です。
現役の皆さん、これから入隊される方、まずは2-1をマスターして「報告する力」を身につけましょう。素直さこそが成長の第一歩です。
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