「格闘指導官って何?」元自衛官が実体験で語る取得までの道のり

こんにちは、moto_instructorです。

「格闘指導官って何?強いんですか?」とよく聞かれるんですが、簡単に言うと「自衛隊内で格闘技を教えられる人」です。でも実際は想像以上に大変で、正直人生で一番きつい挑戦でした。

今回は自衛隊生活で最後に取らせてもらったこの資格について、リアルな体験談を交えて紹介しようと思います。

格闘指導官とは?

部隊の格闘(格闘技ではなく、あくまで「格闘」です)能力を向上させるために訓練を企画したり、部隊に対して教育・指導することを認められた隊員のことです。

要は「この人は強い、この人はまだまだ」っていう判定をする人でもあります。格闘検定を実施して隊員の実力に応じた級を付与するのも大事な役割の一つなんです。

格闘指導官になるには?

まず格闘検定で特級を取得する必要があります。これがまた大変で…

その後、格闘指導官養成訓練の素養試験に合格すると、やっと訓練に参加できるようになります。この訓練に参加して最後の試験に合格すると、晴れて格闘指導官として認められ、格闘徽章(胸につけるバッチ)を与えられます。

この徽章を普段から胸に装着するため、「あ、この人格闘指導官なんだ」って見た目で分かるようになります。ちょっとした誇りでもありました。

取得に必要な期間は?どのくらい難しい?

正直、めちゃくちゃ難しいです。

人によって現在の体力や技術の習得速度に差があるので絶対とは言えませんが、3年程度かけるつもりで計画を立てることをおすすめします。

僕は大した体力もセンスも無いのに1年で取ろうとしたので、長期休暇をほぼ全て格闘錬成に費やしました。周囲の人にも付き合ってもらっていたので、短期間で目指すのはあまりおすすめしません。

実際どのくらい大変だったか

自分が不器用なこともあるのですが、個人的には人生で一番大変でした。

訓練中に何度も「なんで俺こんなことやってるんだ…」って思いました。特に夏の訓練なんて汗だくになりながら何度も投げ飛ばされて。正直、途中で諦めようと思ったことも数え切れません。

キツい、痛い、動きながら考えるから余計に難しい。体力だけじゃダメで、技術も必要だし、瞬時の判断力も求められます。

合格率はどのくらい?

戦闘職種(いわゆる普・特・機、メインが戦う人たち)か後方職種(航空科等のメインが整備の人たち)かによって環境も変わるため難易度もそれに応じて変化するとは思います。

僕が在籍していた駐屯地では、1年間で数名の特級合格者が出て、指導官に認定される人は年間1人いればいい方ぐらいの認識でした。

かなり狭き門だったと思います。

なんで取ろうと思ったのか?

正直に言うと、部隊の雰囲気を変えたかったからです。

部隊に配属されてから数年が過ぎて、最初のころは色んなことが刺激的で、大変なこともあるけど楽しい日々を過ごしていました。

でも慣れてくると日々の無駄なことが目につくようになり、色んなことに嫌気がさして来ていたんです。同僚たちもそんな雰囲気で、

「昔はよかったのに…」
「何をしても言っても部隊は変わらない…」

みたいな後ろ向きな発言が目立つようになっていました。正直、僕もその一人でした。

先輩からの一言で変わった

そんな中である先輩(この人も指導官でした)が異動してきて、話をする中でこんなことを言われました。

「変えられるのは自分だけ。環境に文句言うより自分の能力を上げること」
「つまらないのは挑戦していないから」

この言葉が心に刺さって、自分の中でなにか挑戦してみたくなりました。その中で思いついたのが格闘指導官だったんです。

取得後に変わったこと

自分でも驚いたのですが、一番最初に感じたのが挑戦させてくれた職場や周囲の方々への感謝でした。

今まで散々文句を言っておいて都合のいい話ですが、1年間格闘に全力を注ぐために色んな人に協力してもらい、休暇中にもかかわらず練習に付き合ってくれた人たちに、なんとか恩を返さないとと考えるようになりました。

部隊に戻ると、たくさんの方にお祝いの言葉をいただきました。あの時は本当に嬉しかったです。

民間で活かせるスキルはあるの?

残念ながら自分は退職しましたが、格闘指導官のスキルは民間でも絶対に活かせると考えています。

格闘指導官の本質は、自分の持つスキルを人に教えることができること。要は自分以外で「再現性」を出すことができるんです。

これって、どんな仕事でも必要なスキルですよね。部下の指導、新人教育、チームマネジメント…全部に通じると思います。

まとめ:挑戦することで見える世界

格闘指導官を取得して一番学んだのは、**「環境を変えたいなら、まず自分が変わること」**の大切さでした。

当時の僕は部隊の愚痴ばかり言っていましたが、結局何も変わりませんでした。でも自分が挑戦を始めた瞬間から、周りの見方が変わり、協力してくれる人が現れ、最終的には感謝の気持ちまで芽生えました。

これは格闘指導官に限った話ではありません。転職でも、新しいスキル習得でも、副業でも同じだと思います。

「つまらないのは挑戦していないから」

あの先輩の言葉は今でも僕の心に残っています。

もし今、何かに挑戦したいけど迷っている人がいたら、ぜひ一歩踏み出してみてください。きっと今とは違う世界が見えてくるはずです。


次回は「ヘリコプター整備士の1日」について書こうと思います。命を預かる責任の重さや、実際の整備現場のリアルをお伝えできればと思います。