こんにちは、moto_instructorです。
今回は約20年間経験した自衛隊のヘリコプター整備士がどんなことをしているかを紹介したいと思います。
「ヘリの整備士って何してるの?」とよく聞かれるんですが、簡単に言うと命を預かる責任の重い仕事です。
ヘリコプター整備士ってどんな仕事?
自衛隊の中では「航空機整備陸曹(陸曹=階級)」といい、ヘリコプターの維持・管理をする仕事です。
ざっくり言うと:
- 飛ぶ前:本当に飛ばして問題ないか点検
- 飛行中:安全な運航をサポート
- 飛んだ後:次回も安全に飛べるように整備
ちなみに民間でヘリコプターの整備をするためには「航空整備士」の資格が必要になります。
朝の点検から始まる1日のスケジュール
あくまで以下のスケジュールは一例で、部隊ごとでかなり差があります。なるべく専門用語を使わないように注意しますが、分かりにくかったらすみません。
自衛隊に入ろうとしている方にイメージしやすいように、営内者(駐屯地敷地内の寮で生活をする人、基本的に最初は皆営内者)で飛行隊を想定します。
飛行支援の場合の1日
06:00 起床(陸上自衛隊共通です)
06:30 朝食(パンを回収するだけの時も多い)
07:00 検水(燃料に水分が無いか確認)、書類準備
07:30 朝礼、飛行前点検
08:00 機体搬出(小型機は手搬送、中型以上は牽引車使用)
08:30 パイロット合流、一緒に飛行前点検
09:00 エンジン始動、安全確認
09:30 離陸、航空機誘導、休憩と雑務
11:30 着陸、航空機誘導、点検、燃料補給(交代で昼食)
12:30 エンジン始動、安全確認
13:00 離陸、航空機誘導、休憩と雑務
15:00 着陸、航空機誘導、燃料補給、飛行後点検
16:30 書類整理
17:00 終礼
ベースはこんな感じです。実際にはこれに追加で夜間飛行があったり、自衛官としての他の仕事があったりでかなり忙しいです。
整備作業の場合の1日
06:00 起床
06:30 朝食
07:00 整備準備(工具の点検や作業手順の確認など)
07:30 朝礼
08:00 整備前ブリーフィング(危険箇所の認識統一など)、整備開始
12:00 片付け、進捗確認、昼食
13:00 整備前ブリーフィング(進捗に合わせて作業内容修正など)、整備開始
16:30 片付け、進捗確認、書類整理
17:00 終礼
整備で一番神経を使う瞬間
重量物の取り扱いや各種薬品の取り扱い、油圧・空気圧を使用した機材の取り扱いなど、神経を使う瞬間はたくさんあります。
でも個人的には一番神経を使っていた(使って欲しいと思っていた)のは脱落防止と忘れ物です。
脱落防止とは?
文字通り物を落とさないための処置のことで、布やビニール等で隙間を無くして、作業中に誤って部品や工具を落としてもすぐに見つけられるようにしておくことです。
航空機(ヘリコプター)にはたくさんの隙間があり、空間も広いので一度物を落とすとなかなか見つけられません。
さらに怖いのは、飛んでる航空機から物を落とした場合。もし人に当たってしまったら…考えただけでゾッとします。
物を紛失した時の大捜索
テレビ等で見たことがある方もいるかも知れませんが、自衛隊は物を失くすことにとても敏感です。
小銃(ライフル)の部品を落とした場合、何日も、何人も(僕が知ってる中では数百人単位は簡単に)捜索のために使います。その規模の人たちが自分の仕事をストップするということです。
ヘリコプターも同様で、整備していて部品を失くした、落とした場合、クルー全員で捜索が始まります。
これは民間でも同様だと思います。(昔そんな映画がありました、面白かったのにタイトルが思い出せません…)
まとめ
ヘリコプター整備士は、まさに命を預かる仕事です。一つのミス、一つの見落としが大きな事故につながる可能性があります。
だからこそ、細心の注意を払い、何重ものチェックを行い、安全を最優先に作業を進めていました。
この経験は、現在の計測機器整備の仕事でも活かされています。「安全第一」「確実な作業」という基本姿勢は、どんな整備の仕事でも変わらないものだと感じています。
次回は「自衛隊を辞めて1年、正直な感想を全部話します」について書こうと思います。収入の変化、新しい仕事のリアル、奥さんの反応など、転職後の生活を包み隠さずお伝えします。